チェリーテラスの食とレシピ

Cherry Terrace Official Site

長尾智子さんの素材を楽しむシンプルレシピ「第6回 サンジュリアーノ・マーマレード」

マーマレードで前菜からデザートまで

マーマレードといえば、少し苦味のあるおなじみのジャム。市販でもたくさん手に入りますし、冬から春までの時期は八朔や甘夏、レモンやゆず、ブラッドオレンジなどいろいろな柑橘でマーマレードを手作りする楽しみもあります。
ゆでこぼしなど、少し手間はかかりますが、最近は低農薬や無農薬の柑橘も増えてきたので、私にとっても柑橘の時期はそわそわ、いつマーマレード作りをするかを優先して毎日の予定を決める季節です。
マーマレードはポルトガル語のジャムが由来と云いますが、いろいろなところで愛されているもの。スコットランドのダンディーの銘菓、ダンディーケーキはマーマレードをたっぷり入れた濃厚な焼き菓子。イギリスでは朝食の定番ジャムですね。
サンジュリアーノのマーマレードは5種類。それぞれに材料の柑橘の特徴が出ていて、食べ応えのある味です。
産地シチリアのサンジュリアーノ家は、歴史ある侯爵家だそうですが、大きな瓶のマーマレードはとても素朴。皮を剥くところからの仕込みは手作業だけあって、柔らかく煮られた皮は大小様々な気取らない大らかさです。
大きな部分を乗せたタルトも美味しそう、ダンディーケーキのような焼き菓子も、マドレーヌ生地も合いそうですが、ここでは朝食や食事のスタートからデザートまで、少し違うマーマレード使いをご紹介します。お好きなマーマレードでお試しください。

マーマレードとラウデミオの食べ方アイデア

チーズとマーマレードの盛り合わせ

柔らかな風味のチーズを切り分ける。ここではブリアサヴァランを。他にシェーブルやカマンベール、ブリーなども美味しい。
好みのマーマレードを添える。パンドカンパーニュなど、少し素朴なパンを温める程度にごく軽く焼き、チーズとマーマレードを乗せて、ラウデミオを細く垂らす。

トーストに合わせて

食パンをこんがりと強めにトーストし、ラウデミオを塗る。その上にマーマレードを乗せて、バターとの組み合わせとはひと味違った朝の食べ方。ラウデミオとマーマレードの風味をストレートに味わうには、シンプルなパンがいい。

甘いだけでなく、苦味があるというところが他のジャムにないマーマレードの特徴です。柑橘の種類によって変わりますが、わずかでも苦味があることで、単独で、また他の食材と合わせた時に深みをもたらします。
チーズを合わせるなら、クリーミーな白カビ系がお勧めですが、少しアレンジして、マーマレードを小鍋で焦げないように少し煮詰めて水分を飛ばすと、羊ミルクのハード系にも合うような強さになってこれも美味しい。
一番単純で良さがわかるのは、毎日食べたくなるトーストです。どちらもラウデミオが他の食材との仲を取り持ちます。

やりいかと野菜のサラダ アジア風マーマレードドレッシング

以前、バルサモビアンコに青唐辛子を漬け込んだスィートチリソースを提案しましたが、こちらはもう少し濃厚なソース状のドレッシングです。アジア系の料理に限らず、柑橘系の風味は欠かせないですね。レモンやゆずもいいですが、もう少しマイルドで甘さのある柑橘風味は、ナムプラーなどの発酵調味料を使うアジア料理にぴったりのバランスです。
ドレッシングは、ぜひたくさん作って冷蔵保存して楽しんでください。揚げ物にもぴったりです。

マーマレードの使い方
熟成した柑橘の調味料という考え方で使います。バーミックス(スーパーグラインダー)にかけるとピュレ状になり、調味料としてより使いやすくなります。お肉をマリネして焼肉のように焼くのも美味しく、ピュレにしたらリキュールを加えてフルーツソースとしても。

マーマレード風味のチキンソテーと蒸し野菜

マーマレードを料理に使う、と考えると、アメリカ風にバーべキューでしょうか。私はあまり馴染みがないのですが、お酢を加えたオレンジと蜂蜜で鶏肉をマリネして焼くことがあります。それを白ワインの酸味に変えてマリネし、蒸し焼きにしてみました。
鶏もも肉にレバーを加えたアレンジです。レバーが入ると、全体にボリュームが増し、鶏肉だけでない美味しさもあります。蓋をして蒸し焼きし、ほとんど火が通ってから上下を返して仕上げ。残ったソースも風味がいいので、煮詰めて使い切ります。
豚肉やラム肉でも。付け合わせは、一回り小さなフライパンでシンプルに野菜を蒸し焼きします。

マーマレードの使い方
風味付けの決め手です。白ワインと合わせると、マーマレードの違ったキャラクターが見えてくるという不思議。ジャムではなくなるという感じでしょうか。ここでも使い方は調味料でもありますが、もう少し風味の主張があります。白ワインは、新しく開けずに残ったら取っておくということで十分。

マーマレードキャラメルソースのパンプディング

マーマレードで何か一つ、と考えた時に、まず浮かんだのは焼き菓子ですが、あえて脇役的な使い方にしました。キャラメルソースの濃い風味に加えるので、土台のパンは白くて軽いものではなく、少し食べ応えのある全粒粉入りで。どちらかが負けてしまうとバランスがあまり良くないので、パンの選び方でしっかりした焼き菓子のようなおやつになります。
フライパンに並べてパンに卵液を染み込ませ、そのまま焼き、焼きたてをそのまま食卓へ。という快適さです。別の器に移して切り分けると、別の雰囲気と味わいで、温かくても冷たくても美味しい。

マーマレードの使い方
ただのキャラメルソースではないし、何だろう?と思わせるような、影の立役者がマーマレード。キャラメルソースは、砂糖を焦がしてこそ生まれる魅力的な風味ですが、そこに加えることによって、さらにリッチな美味しさになります。パンナコッタやチーズケーキに添えるのもかなり効果的。