夏が長くなり、季節の区切りが変わってきている変化は、今までで一番感じた今年でした。やっと落ち着いて仕事や家事をしたり、出かけたりとしながら、忘れていたような秋から冬の楽しみを思い出します。野菜や果物に加えて、毎年気になるのがオリーブオイルのこと。毎日に欠かせない大事な調味料ですから、気候変動の中で今年は大丈夫かなと、つい心配してしまします。今年のヌォヴォ・ラッコルトは、オリーブも豊作で、風味豊かなとても良い仕上がりと聞きました。自然の変化に一喜一憂する私たちより、作物は逞しく力強いのでしょうね。ラッコルトは、イタリア語で収穫を意味する言葉。トスカーナの収穫物をひとさじ、器に乗せて味わってください。仕上げに少しかけるだけで十分なラッコルト。今回は青じそ、レモンやケイパー、クミンシードなどと馴染ませたソースにするものと、そのまま仕上げに使う2つのやり方にしてみました。混ぜるだけ、かけるだけで仕上げはラッコルトがなんとかしてくれる、とまで頼りになるオリーブオイルですが、他の素材と合わせることで、さらに美味しさと豊かさが倍増するように思います。そして食べる楽しさも。個性豊かな風味ですから、スタンダードなラウデミオと混ぜて好みの風味にしてもいいし、自在に使うこともできるのです。日々のキッチンで試すことで、自分好みにアレンジするのもおすすめです。材料と手順はなるべくシンプルにして、その分気を使うところは、クミンやくるみは焼いておくとか、食べる直前に仕上げるとか、茹で卵はゆっくり冷ますとか。ちょっとした気遣いをすることで、香りと食感は変わっていきますから、シンプルな料理ほど細部を丁寧にするというのが、年に一度の特別なオリーブオイルであるラッコルトに教わったことです。スプーンでそっと丁寧に、魔法のひとさじという気分で仕上げてください。

まぐろのタルタル 青じそオイル

まぐろの大きさによって、また食べ方によって3、4人分くらいになるので、小さく切ったバゲットに乗せてクロスティーニにするのも美味しい食べ方です。
まぐろは、メジマグロ、キハダマグロなど味がさっぱりとして手頃な種類を選んで、青じそとラッコルト、塩でしっかり味付けすると、それぞれの風味が際立ちます。レモンは、まぐろが変色しないように食べる前に搾りかけるときれい。さっと茹でたイカやエビ、帆立などでも。

青じそソースはパスタや、ポテトサラダ、キャロットラペに加えたり、スープの仕上げに使っても美味しいので、多めに作っておくといいです(冷蔵庫で1週間くらい)。
鶏肉とマッシュルームのソテー レモンオイル

シンプルな鶏肉のソテーにマッシュルームは好相性。まいたけや椎茸、エリンギなどでも美味しく、深まる秋らしい雰囲気になります。

鶏肉を焼くフライパンは、なるべく使い慣れて油が馴染みやすいものを使うこと。にんにくが焦げすぎないように(よく焼いたら一緒に食べられる)。鶏肉はなるべく動かさないように焼いてください。

レモンは皮だけをすりおろしてラッコルトと馴染ませます。果汁は使い道がたくさんあるので今回は使わずに皮の強い風味だけを生かします。多めに作っておいて冷蔵保存するのもおすすめ。焼き魚や魚介のサラダ、お刺身、パスタソースにも。
りんごのソテーとブルーチーズ

前回のりんごとチーズのラフな組み合わせを、今回は少しおすましなもてなし風に。りんごは少量のラッコルトで素焼きのようにし、最後にソースのようにして仕上げます。

りんごは生の新鮮な歯ごたえを活かしてもいいし、今回のようにじっくりと焼くことで引き出される甘さも魅力。ラッコルトで焼くことで、りんごにコクが加わるのも良いところです。

他にも、くるみ以外に皮つきのアーモンドをザクザクと刻んでも美味しいです。チーズは、塩気とクリーミーな風味ならゴルゴンゾーラやロックフォール、もう少し控えめで食べやすいダナブルー、ブルードヴェルニュなどもおすすめ。

材料が残ったら、小さくほぐすなどしてラッコルトに漬けておくと、何度も楽しめます。生クリームと合わせてパスタソースに、シンプルなサラダに、細かく切ったりんごをソテーして、パンに一緒に乗せても。
ウフマヨネーズ ケイパーとクミンオイル

手軽に作れて、少しよそ行きの雰囲気になるので、おもてなしの前菜としてとてもおすすめのウフマヨネーズ。マヨネーズは自家製ならなおよく、豆乳を加えるとさっぱりとした感じに、牛乳だとミルキーさが増します。

クミンシードは少量でもあらかじめ軽く炒って香りを立たせておくと、オイルと混ぜた時に個性を発揮します。ケイパーはしっかりと水を切って使うこと。それに加えて、ゆで卵は柔らかめにしてゆっくり冷まし、食べる直前に盛り付けるなどで出来栄えが違ってきます。シンプルなものこそ、タイミングを見計らうように。
このソースは、今回の鶏肉とマッシュルームのソテーのレモンオイルの代わりに使ってもよく合います。スモークサーモン、お刺身サラダに。ポークソテーには、ケイパーの漬け汁少々とレモン汁も足して仕上げに使うと、酸味が効いた仕上がりに。
水切りヨーグルトとアンチョビのクロストーネ

ヨーグルトの水切りは、時間が長くなるほどに水気が抜けてクリームチーズのような質感になるので、好みで柔らかくてもいいし、すぐに水気が抜けるものではないので、一晩冷蔵庫に入れておくのが帰って面倒ではなく確実な方法。少し柔らかくしたい場合は、ホエーを少し加えて調整するといいでしょう。

水切りの時間を短く済ませる場合は、ショートパスタのソースにするのもおいしい使い方。パスタティレーナのメッツェマニケは、太めで短いので、ソースが入り込みやすくて前菜のように少し食べるのにもとても向いているサイズ。100g適度を茹でて、柔らかめの水切りヨーグルトにアンチョビ、レーズンを混ぜたもので和える。仕上げに黒こしょうをたっぷり挽いて仕上げ。ワインにもよく合い、できたての温かいままでなくても美味しいので、パスタを茹でてラッコルトを少しかけておき、食べる時にソースと和えるようにしてください。

			