|
|
|
|
![]() ![]() |

フランスのフレッシュクリームは、濃厚なタイプとリキッドなタイプの二種類。濃厚タイプには酸味があり、日本のサワークリームに近く、ポタージュやクリームソースには不向き。このようにオムレツにはさむと濃厚なクリームが卵の温度で溶けてソースになり、スモークサーモンとのバランスはなかなかです。
家の近所のグルネルの朝市で。卵はケース売りもされていますが、1個からでも購入可能です。産みたての卵は農家から直送され、チーズやフレッシュクリーム、ヨーグルト、牛乳などと一緒に並べられます。卵の後ろに見えるチーズは、コンテやボーフォールといった山のチーズたち。
フランス料理留学を終えて帰国した私は、料理書を出していただくなら絶対にここで、と渡仏前から夢に描いていた文化出版局から、偶然の導きで願い叶い、初めての著書『シンプルフランス料理』を出版しました。その当時の日本でフランス料理といえば、ボリュームたっぷりで味わいは重たく、脂っぽくて胃にもたれるというイメージ。そして年に数度の特別な日に、ホテルのメインダイニングや当時まだ数が少なかった街のレストランを予約して、オホホとかしこまっていただくというものでした。ホテルの晩餐は決まってコンソメスープに始まり、フォワグラらしきもののテリーヌにはトリュフの替わりにヒジキの黒で作ったゼリーのような不思議なものが入っていて、メイン料理としては牛のフィレステーキが一番のご馳走と考えられ、そのメインディッシュのあとに必ずグリーンサラダがサービスされたものです。そのような時代背景のもとで出版された著書の中で、私がこのことは是非伝えたいと考えたことの一つが「オムレツもスープもフランス料理です」ということでした。
その当時の日本では、コックさんが(まだシェフという言葉は一般的ではありませんでした)十分に油ならしされて黒光りする鉄のフライパンを器用に操って、焼き色はいっさいつけず、表面に大きなしわを寄せず、中はきわどく半熟に、両の端がきちんと尖った見目美しき舟形に焼き上げるべきものでした。ところが留学中のパリのカフェで食べた憧れの本場オムレツといったら、それこそチャチャチャと焼いてチーズやハムを散らしたら、そのまま皿にずらしてペタッと半分に折っただけ、というごく簡単なもの。なぁんだ、これでいいのだと、肩から力が抜ける思いがしたものです。冬ならこれにオニオングラタンスープやポロネギとジャガイモのポタージュ、それに美味しいパンとワインがあったら、はいフランス料理!大発見!
さて、このパリレシピのページでは今回からオムレツ12ヶ月の連載がはじまります。第一回目は年始のおもてなしにもおすすめのスモークサーモンのオムレツです。卵の温度で溶けたサワークリームがソースとなり、香草の風味がことのほか生きたご馳走オムレツ。残ったサワークリームを使い切れるように、ハムとりんごジャムのペーストもご紹介します。では続きはレシピページでどうぞ。