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パリから南西にオートルートを走り、小1時間ほど。エッソンヌ県のヴィリエ・ル・バークルという小さな村に、藤田嗣治画伯が晩年を過ごした家があります。村道に面して素朴な佇まいをみせるこの小さな家は、画伯が81歳で亡くなるまでの間を君代夫人と過ごした終の住処。今ではメゾン・アトリエ・フジタとして、エッソンヌ県の管理のもと、大切に保存されています。
家に一歩入ると、画伯手づくりの帽子掛けには愛用したハンチングが生前のままにかけられ、上階のサロンのプレーヤーには美空ひばりのレコードがのせられたまま。寝室の間仕切りも、カーテンも、風呂敷を使ったテーブルクロスも、そして服までもが、みな画伯のお手製と知ってびっくりです。なんと器用な方だったのでしょう!この家に越してきたのは画伯74歳の時。にも拘らず、この制作意欲の旺盛さには驚かされます。むろん、屋根裏のアトリエでは作品を描き、そしてランスの聖堂のための習作に勤しんでいたのです。「いつでも手を動かして何かしらを作っている人だった」と、君代夫人は思い出を語っておられるそうです。
そして目を引きつけられたのは、庭に面した愛らしい台所です。なんとそこは60年代の思い出に満ちあふれた宝箱。私の子供時代を想い起こさせる日立の炊飯器にワクワクし、その隣にかき氷器を見つけ、画伯がこれでガリガリとやっているところを想像して微笑ましく思い・・・と、その後ろにバーミックスを発見して私は大喜び。チェリーテラスさんにお知らせしなくては!と意気込んでシャッターを押したのでした。60年代当時のバーミックスといったら、おそらくかなり高価だったはずです。藤田画伯は料理もきっと一流だったのですね。パリにいらっしゃる機会がありましたら、この宝石のような小さな家を是非お訪ね下さい。