|
|
|
|
![]() ![]() |
オーブンの扉を開きたくなる季節がやってきました。
そういえば、パリの我が家のオーブンとはすでに18年も一緒。ドイツ製のこの電気オーブンは実に丈夫で、私のこれまでの人生のほぼ三分の一ともなるこの歳月、一度も修理を要したこともなく、10年前から我が家のキッチンに迎えたイタリア製の卓上小型オーブンとともに活躍しています。開け放ったキッチンの窓から吹き込む風にどこともなく湿った落ち葉の匂いを感じながら、このオーブンとも長い付き合いだなと、ちょっと感慨深く思う私です。
そんなふうにオーブンのことを考えていたら、蚤の市で厨房用品を扱う知人から 「この素敵なオーブンを買いませんか?」 というメールが届きました。何枚もの写真が添付されています。
Le tres beau piano de cuisine
Ci joint photos d’un piano de cuisine
C’est un tres joli modele provenant d’un immeuble parisien de la fin du XIXeme
Epoque 1870
Dimensions
Long : 2.81
Haut : 0.81 + 1.50
Profondeur : 0.85
Le prix export est de 9.800?
Si vous avez besoin de nouvelles informations
N’hesiter pas a nous joindre!
「とても美しい厨房のピアノです」 そうなんです。かつてフランスでは、オーブンのことを厨房のピアノと呼びました。そして今でもレストランの厨房にある鉄製の床置きオーブンのことをシェフ達は「ピアノ」と呼びます。「19世紀末建造のパリの建物の中で使われていたモデルです。製造年およそ1870年。 サイズは 幅2m81cm、高さ81cm~1m50cm、奥行き85cm、価格は9800ユーロ、 もしご興味あればどうぞ気軽にお問い合わせください!」
パリのどこかで古い建物がリノベーションされると聞けば飛んで行き、フランスのどこかでシャトーが売りに出されると聞けば駆けつけて、古い厨房内の備品を買付けているこの店の主のフランソワ。彼が撮影したらしき何枚もの写真には、この古い「厨房のピアノ」の細部の美しさに惚れ惚れしている彼の気持ちが表れています。この写真は世界中にいるフランソワの顧客の元に送られ、一目惚れした誰かの元にきっと運ばれて、二つの世紀をまたいでいで仕事をし続けたこのオーブンはこれからも生き続けるのでしょう。
歴史的に暖炉やオーブンで調理することが基本のフランス人ですが、電気オーブンが主流となった現代の家庭ではオーブンから食卓に直行させられる食器は重要なアイテムです。いちじくのオーブン焼きとパンペルデュを盛りつけている、写真でご覧のこの器は私も愛用しているジャスの耐熱皿。オーブンに入れても大丈夫なの?と思わせるような繊細さや、職人の手のぬくもりを感じさせるフォルムがとても魅力的です。機能だけのオーブンウェアではない、こんなに美しいものが存在する。世紀を超えて古い「ピアノ」が存在し愛され続けるフランスならでは、ですね。