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フランスの陶磁器メーカー・ジャスの器を使用したコーディネート。「この鮮やかな色彩の器を見た瞬間、クミンなどエキゾチックなスパイスの香りのイメージがパッとひらめいたのよ」と上野さん。ときには器からインスピレーションを得ることもあるそう。
「若鶏とにんじんのクスクス」は、写真のように焼いた鶏とソースを別々に盛り付けても。
1年分の生牡蠣の消費量のほぼ半分は12月に集中すると言われるフランス。このことが語るように、フランス人にとって12月とは美食のお祭り月間です。トリュフのお値段は12月24日のレヴェイヨン(前夜祭)に向かってどんどん上がり、大晦日までその価格が下がることはありません。キャヴィアは、たとえば4~5人で「食べたぞ!」と満足するためには250グラムは必要。となると・・・安く手に入れたとしても500ユーロ(8万円以上)はかかるのですから、少ない量でもまぁなんとか使えるトリュフに比べるとぐっと割高で、涙です。12月半ばの美容室でのことです。スタイリストは私の髪をカットしながら尋ねます。「キャヴィア、特別価格で手に入るけど、どう?イラン産のセブルガのロワイヤルが1950ユーロ」。美容サロンの鏡の前でこんな会話があるのですから、この時期は年に一度のキャヴィアの季節というわけなのです。そのキャヴィア、そば粉のパンケーキ”ブリニ”にのせて食べるのが一般的ですが、私はじゃがいも派。ラットとよばれる品種を蒸かして、まだ温かいうちに(けっして熱々ではなく)少量のダブルクリーム(日本だったらサワークリームがよいでしょう)、そしてキャヴィアを「こんもりと」のせていただきます。これを何回繰り返せるかは、その一年の働きぶり、すなわち懐具合にかかわるというわけですね。
そんな贅沢も許してしまおう、というお祭り気分も過ぎ去り、新しい年がやってきました。1月1日の休日が過ぎれば、正月気分というものがないフランスでは日常の暮らしが始まります。12月には家族を中心とした集まりが多いこともあり、年末に会いそこねた友達を家に誘ってのディナーが度々開かれるのがこの季節です。トリュフもキャヴィアもフォワグラもない、いつもの家のご飯で、なんの気負いもなく。買ってきた前菜に煮込料理かロースト、そしてデザートはフロマージュブランとフルーツだけでも胸を張っておもてなし!なのです。しかし、そうとわかっていても、人を招くとなると私はたいていやりすぎ、作りすぎの傾向になってしまうのですから、この点の日本人らしさはまだまだ残留気味。こちらに来て初めて人を招いた時など、次々に料理を出し続けてあまりに長引くディナーに「マリコ、これは多すぎよ!」と呆れられ、首をすくめたものでした。30年近く前に出した初めての著書『シンプルフランス料理』では「前菜と主菜、それに簡単なデザートの3品だけでよいのだからフランス料理は合理的です」などと書いておきながら、買い出しに出かけて魅力的な素材を見てしまうと、ついつい品数が増えてしまう。結果、ファム・ド・メナージュ(お手伝いさん)がいるわけでもなし、自分一人で忙しくサービスするはめになり、おもてなしのはずが大失敗ということも度々だったものです。
今月ご紹介する献立ですが、まず前菜のバナナの一皿(「バナナと生ハムのサラダ ラウデミオソース」)は切って盛りつけてオリーブオイルをかけるだけという超簡単さ。これで一品できると思うだけで心が相当軽くなることでしょう。そしてメインの「若鶏とにんじんのクスクス」は何日前からでも作っておけ、冷蔵庫でねかせている時間が長い方がソースと具材が馴染んで美味しい。鶏肉は朝出かける前にマリネしておけば、あとは焼くだけ。デザートの「ブランマンジェ」もその場では型からはずしたりの手間もなく、ソースをかけるだけで出来上がりです。こんな献立で人を招くならば、余裕で器選びを愉しめます。気のおけない日常の美味しさを、大好きな、大切な器達の中に丁寧に盛り込むことでおもてなしは成功することでしょう。