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シャンピニョン・ド・パリとは「パリの茸」の意味。もともとはパリ近郊の野原に自生していたシャンピニョン(ピンクがかった薄茶色)を地下室で人工的に作り、この名がつけられました。直径2センチほどの小さなものから、詰め物に使う7~8センチはある特大まで。
7月から9月にかけては、ブルターニュ産の養殖ムール貝・ブゥショのシーズンです。養殖というと天然物には劣るというイメージがありますが、ムール貝の場合は別。雑味が強く、殻は大きいけれど中身がぐっと小さい天然のものに比べて、ブゥショは小さな殻の中いっぱいに、弾力のあるオレンジ色の身が詰まっています。殻を開き、エスカルゴバターを詰めて焼いたり、バターたっぷりでワイン蒸しに。
「お暑いことでございます。猛暑です。パリはいかが?」 この夏、日本からこんなお便りを何度いただいたことでしょうか。2004年の猛暑では1万人以上の人が亡くなったパリですが、その年はうまいこと冷夏の東京で過ごせた私。さて今年はどう転ぶか・・・と賭けにでた気でいましたけれど、この夏、パリは連日涼しく、時には寒いとさえいえるほどの冷夏。「ちっとも夏じゃない!」と不満足げなフランス人を横目に、熱さと湿度に弱い私にとってはパラダイス。最高気温と最低気温の差がほとんどない日本に比べると、その差は10度から日によっては15度もあるのです。仕事も快適にはかどり、8月のパリに乾杯したい気分。でも冷夏の影響で農産物は激しく値上がり。喜んでばかりもいられない夏の終わりです。
今月は秋の入り口にふさわしく、きのこのオムレツがよいかしらと市場に買い出しに行くと、さすがにセップ茸にはまだ早く、ジロールや、死のトランペットという意味の黒い茸、トロンペット・ド・モールが出ています。セップ茸のレシピなら、松茸やエリンギを使って日本でも似たものが再現できそうですが、ジロールやトロンペットでは簡単には入手できないでしょう。そこで一年中ある素材ではありますが、こちらではシャンピニョン・ド・パリと呼ばれるマッシュルームが、それは立派に大きく、真っ白で鮮度もよかったので買い求め、ウ~ム・・・と2分くらい深く考えて思いついたのが今月のオムレツです。というわけで、e-gohan にて初公開となる、シャンピニョンのカルパッチョをのせたオムレツです。
素材の切り方によって風味の変化をたのしめるのが料理の面白さの一つですが、シャンピニョンもこうして薄くスライスして生で食べると、なにやら高級感漂う味わいに。包丁ではなく、できればスライサーでごく薄くスライスしたいところです。日本製の「ベンリナー」という名前の、超シンプルな作りながら非常に使いやすいスライサーが私の愛用品です。これはパリではプロ向けの調理道具屋さんでも扱っていて、どうやらこちらのプロにも認められた優れもののよう。これで大きなシャンピニョンをスリッスリッと薄くけずるのですが、今風にいえば、カルパッチョ状にスライスということでしょう。これを焼き上げたオムレツに重ねながら並べて、そこに温かい松の実とバジルのオイルソースをかけ、塩をふります。生のシャンピニョンがオイルの熱でほんのりと温められて、食べ進むと次第に透明感が出てきます。松の実とバジルの組み合わせは南仏やイタリア料理でお馴染みですよね。鮮度のよいシャンピニョンというのが、ちょっと難題かもしれませんけれど、是非さがし出してお試しください。