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Top上野万梨子の「パリレシピ」

上野万梨子の

パリレシピ Recettes parisiennes

いつもおしゃれで斬新なレシピを紹介してくださる上野万梨子さん。2008年のエッセイのテーマは、「おもてなしの食卓」です。楽しいエピソード、盛り付けや器のコーディネートのコツ、心がけたいことなど・・・思わず人を招きたくなるレシピを添えた、楽しいエッセイをどうぞ。


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vol.15心おどる春の日には、生野菜のクルディテがおすすめ


フランスの陶磁器メーカー・ジャスの器を使用。「真鯛のアーモンド寿司」のコーディネートも必見です!

 このお便りが皆様に届く頃、パリの花屋さんの店先には目に鮮やかな純白のシャクヤクが咲き競っていることでしょう。ヨーロッパでは、白い花のその白さが、日本の花の白とはまったく違うことに気がつきます。日本では白といえば「清楚」とか「無垢」というイメージ。その白という色を「鮮やかな」と形容できるのは、やはりヨーロッパの風土にあってこそのよう。

 シャクヤクのように香り華やかな花は食卓の近くには向かないもの。でも春のワクワクと踊るような光りの中でいただくお昼ご飯なら、花の香りに包まれながらも素敵です。そんな日に選びたい献立は、香り立つソースを味わう料理ではなく、畑から直行の生野菜のクルディテです。

 プロヴァンスを旅した時のことです。地元の友人に是非にと奨められて訪問したビストロに入ると、村役場の食堂のような広いスペースに並んだ食卓のどれもに、素朴な陶器の大ボールに盛りつけられた生野菜がすでに置かれています。調理をしていないタダの生野菜。人参なら細いのが丸ごと、セロリなら葉付きの枝がそのまんま、ズッキーニは縦半分にカットされて、紫色の小さなアーティチョークは四つ割りで、そのどれも畑から持ってきたばかりといった勢いで、ズンズンと大胆に天に向かう勢いで盛りつけられています。ワインの入ったピシェ(ピッチャー)、水、そしてパンと、スタートに必要なものはすべて卓上にスタンバイ。メニューを選ぶ手間もかからない、というか、選ぶ余地もないお決まりコース一つのみのランチサービスなのでした。そして、そのクルディテは、それまでに味わったこともない超鮮度の美味しさで、それは何年経っても忘れることができない旅の思い出として残っています。クルディテのソースとなるのは、アンショワイヤードとよばれる、すりつぶしたアンチョビとニンニクをオリーブオイルでのばしたソース。ほんのりと温められたそのソースを、皿にとった生野菜にからめて食べる・・・ただそれだけの料理です。ゆで野菜と違うのは、どれもに畑の匂いや太陽の風味がして、香り鮮やか。生野菜だから食べるのにやけに時間がかかるけれど、バリバリボリボリかじっていると、その野菜の素のままが、当然ながらよく解るのです。

 「野菜を食べるのにこんなにアゴを使うなんて、あぁ、食べ疲れたよ!」と笑いが止まらなくなる人も。

 締めのシュルプリーズ(サプライズ)はボールの底に隠してある茹で卵です。タダのゆで卵なれど、卵好きの私にはたまりませぬ。野菜がこんなに美味しいのだから、卵だって・・・ですから。

 さて隣のテーブルを見ると、常連さんたちの食べ方の美味しそうなこと!卵の殻をむき、お皿の上で大ざっぱに刻み、残ったパンを小さくちぎり、食卓に散らばったパンのクルートも手の平に集めて皿に散らし、皿の上に残っている野菜くずとソースと一緒に混ぜ混ぜしてフィニッシュ体勢。どうです!たまらなく美味しそうでしょう?

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