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Top上野万梨子の「パリレシピ」

上野万梨子の

パリレシピ Recettes parisiennes

いつもおしゃれで斬新なレシピを紹介してくださる上野万梨子さん。2008年のエッセイのテーマは、「おもてなしの食卓」です。楽しいエピソード、盛り付けや器のコーディネートのコツ、心がけたいことなど・・・思わず人を招きたくなるレシピを添えた、楽しいエッセイをどうぞ。


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vol.16パリ流パーティはおしゃべりが主役。フィンガーフードでおもてなし


フランスの陶磁器メーカー・ジャスの器を使用。南仏の伝統的なデザインの器に、プロヴァンス風のアミューズを。

長年アペリティフ用に愛用しているゴールドのお皿たち。数を必要とする食事用ではないので、食卓ではあまり出番がないこんな器で華やかさを楽しみます。小皿は本来は灰皿用として売られていたもの。これはオリーブなどの種入れに。姫フォークはタイ製です。

 パーティーというと、即「飲んで食べてのお集り」とイメージされることが多い日本では、ゲストをおなかいっぱいにしそこねたら失敗と思ってか、多め多めに料理や飲物を用意しがちです。もちろん料理でもてなすことが目的の会もありますから、その場合は食べ物が主役級の存在ということで、その重要性は当然。でもフランスで、というか少なくともパリで、料理の種類や量の多さでもてなすという発想は、ほぼあり得ないといってよいでしょう。それは外でのパーティーも家庭でのおもてなしでも同じ。主催者も招かれる側も、お互いにチャンスをオファーし、またチャンスをつかむことを目的としたお集りでは、なんといってもおしゃべりが勝負。飲んで食べるためではなく、口は喋るためにあり、ということなのですね。着席スタイルでは会話ができる人の数も限られますが、立食ならば当然、目的と定めた人のそばに自分から近付くことができるわけで、その機会をうかがっていたら、食べてばかりとはいられないものなのでしょう。

 ということで、パーティー上手なフランスで、会話を途切れさせないフィンガーフードは小さいながらも重要な存在です。胸元や指先を飾る小さなビジュー(宝石)のように、大げさには目立たず、といって無いことは考えられないキメの存在と言ってもよいでしょう。そんなフランスのパーティー用フィンガーフードの進化に一役買っているのがアガアガ、寒天です。小さなアミューズの上にこんもりと乗った泡状のソースは、一見消えそうでいて実は寒天で固められ、タラリと落ちているソースも寒天でほどよく固められ・・・。ですから指先でつまんで口に運ぶまでの間にソースが服の上に落ちる心配がありません。少し前まではカナッペやパイ生地のブーシェ、プラムやカクテルソーセージにベーコンを巻いて焼いたアミューズなどが主流だったフィンガーフードが、今ではアガアガのおかげでかなり本格的な料理をほんの一口で味わうことが可能になったのです。

 今回、ジャスの器に合わせてご紹介しているフィンガーフードは家庭でのおもてなし向きのアミューズです。食卓につく前のおしゃべりタイムは、キッチンで仕上げのひと仕事が残っているかもしれない招く側にとっては、お客どうしで盛り上がっていてほしいひと時。こんな時私は、数はたくさんそろっていないけれど、こんなシーンで使ってみたいと思う器あれこれにおつまみ料理を盛りつけてサービスします。出番がそう多くはなさそうな形の器、料理を選ぶ色合いだけれど、だからこそ何かを盛りつけてみたいと強く感じる魅力的な器に出会うと、すぐにまとめて購入せずに数枚単位で買い求め、食前のアミューズから使いはじめてあとで買い足すということは、私にはよくあるパターンです。器使いの楽しさもお客様に味わっていただける食前のアミューズ。特にメイン料理を用意しなくても、フィンガーフードとおしゃべりだけでおもてなしが成功したら、パリ流パーティーの達人といえるのかもしれませんね。

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