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「浜作主人の家ごはん」ぎをん手習帖

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十二之巻

「京の祭月」

中庭の白紫陽花を河井寛次郎先生の扁壺に生けて。

 古くから日本には一年に二つの大きな節目がございます。言うまでもなく一つは、新年を迎える前の日、十二月三十一日の大晦日でございます。もう一日は、これから厳しい夏を迎えようとする時に気を引き締め、神様のご加護をお願いするという「夏越」と言われる六月三十日であります。

 「水無月の夏越の祓いする人は 千歳の命のぶといふなり」

 盆地故にひと際厳しい夏を乗り切ることは、京都人にとりまして最大の難事でございます。そのためにも神様や仏様のお力を借りて「なにとぞ無事に家内安全、平穏でありますように」とお祈りする行事が連日のように様々なところで行われております。

 月が変わりまして七月は、京都人にとって「祭月」とも言える特別な季節でございます。そのお祭りである祇園祭は、大阪の天神祭、東京の神田祭と並ぶ、日本三大祭りの一つであり、そのご祭神は俗に「祇園さん」と呼ばれる八坂神社に鎮座まします素戔嗚尊様でございます。八岐大蛇を退治なさったほどの武名高き神様でございますので、人に害をなす悪霊を封じ、厄を退散させるというような実に頼もしい御利益がございます。

 千年に亘り大都市であった京の都にとって、それもエアコンや冷蔵庫のない時代、食べ物の腐敗を防ぎ、体調を維持することはまさしく至難の業であり、人間の力だけでは到底それを成し遂げることはできません。お祭りの中には、五穀豊穣の秋の実りを感謝するいわゆる秋の豊稔祭や、田植えの無事をお祈りする春のお祭り、また、ご祭神の功績を顕彰するお祭りなど、様々な目的がございますが、殊この祇園祭はとにもかくにも厄病除けを祈念するお祭りであります。
 長年都であった町衆の有り余る財力を投じて誂えられた調度品は、誠に世界に誇るべき日本芸術の精華であります。美術館や博物館に収蔵されたものをガラス越しに拝見するのではなく、実際にその芸術品が設えられた山鉾が都大路を練り歩くのですから、他に例えようのない豪華絢爛なページェントが繰り広げられます。

 夕暮れ時になりますと、拙店の玄関先にはご祭神の素戔嗚尊を奉じた金無垢の御神輿が渡御なさいます。それを担ぎ手が精いっぱい担ぎ上げ、「ほいっとほいっと」と掛け声をあげながら金無垢の金具がシャンシャンと鳴り響く、勢い立つ勇壮な光景は毎年ながら感激する瞬間でございます。
 このとき、当主である私は間近に見るご祭神を二礼二拍一礼で遥拝させていただき、過ぎし一年の無事を感謝し、来たる一年の安泰と商売繁盛をお祈りいたします。
 一年の中で最も心改まる瞬間でございます。

申歳文月大安吉日

ぎをん八坂鳥居畔 三代目浜作主人 森川裕之

浜作本店の玄関の御飾りした祇園祭本社、御神輿拝領の粽

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