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「浜作主人の家ごはん」ぎをん手習帖

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十之巻

「淡味清麗」

 ご家庭では料亭や高級レストランのように有り余る材料を肆(ほしいまま)にするということはなかなか叶うものではございません。時間的・経済的にも制約が多く、限られた品数で満足感を得るには工夫を凝らさねばなりません。この点において本来はご家庭のほうが、よりお献立の構成が重要となるべきものでございます。俗に「一汁一菜」「一汁三菜」と申しますが、いかにお汁ものとお菜を組み合わせ、ご飯との相性を見据えてそれぞれを補完し、シンプルながらも不足のない組み合わせになるよう心掛けたいものであります。
 ここで言うところの「一汁一菜」のお汁はお味噌汁を指します。茶懐石ではまず炊き立てのご飯とお味噌汁で構成される一の膳をお出しします。あくまでもお献立の柱は有史以来、日本人の食卓を構成する根幹のお米、すなわち「炊き立ての白いご飯をいかに美味しく頂くか」、この一点にありました。最近では欧米の影響を受け食習慣も多様化してご飯の占めるウェイトもかなり低くなってまいりましたが、やはり我々にとりましてご飯というものは特別なものであることに変わりはありません。かと言って、お味噌汁・おかずともに濃い味つけにしてしまうと何気なくご飯が進みますが、本来のお米の甘味や美味しさを覆い隠してしまいます。


 やはり主役であるお米は少し手間をかけ、一度土鍋でお炊きになられることをお勧め申し上げます。私は毎日ボンポットを愛用いたしております。フランス生まれのこのお鍋を使えば、驚くほど簡単にふわっとした仕上がりのみずみずしいご飯を炊くことができます。べつに特別な技を必要としておりません。独特の形状が均等に熱を伝導させ、また著しく保温性を高め、少々の失敗を包み込んでくれます。
 ご飯と相性の良いものは不思議とお酒とも相性がよろしいものでございます。考えてみればお酒の原料はお米であるわけですから、このことは至極当然のことなのかもしれません。ここでも先ほどの方程式が当てはまります。すなわち、あまりにも塩味の利いたお肴はお酒がどんどん進みますが、本来のお酒そのものの味をこれまた覆い隠してしまいます。


 お料理の優劣は素材が9割を占めるものだと常々力説いたしております。お魚やお野菜そのものの持ち味を下ごしらえやお加減によっていかに引き出すことができるか。このことこそがお料理することの一番の目的でございます。それなればこそ蕪は蕪、大根は大根、といった微妙な素味の違いを味わうことができます。
 皆様におかれましては、思い切ってこの淡味清麗の料理法に挑戦なさってください。今までに味わったことのない、「辛い・甘い・酸っぱい・苦い・塩辛い」という五味の範疇に収まりきれない滋味・妙味を発見なさること必定でございます。


申歳如月大安吉日

ぎをん八坂鳥居畔 三代目浜作主人 森川裕之

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