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特別な料理に使うものと考えていたバルサミコはこの数年で食卓のおなじみになりました。酸味にかぎらず、味を充実させたい時に、なんと便利に使えることでしょう。和風食材と奏でるハーモニーも良いものです。
今月は長尾智子さんの送ってくださったエッセイとレシピ、さっそく試してみたくなります。
株式会社チェリーテラス 代表 井手櫻子
料理を簡単に見栄えよく、さらにぼんやりした味をきっちりと決めたいとき、一番役に立つ調味料はバルサミコでしょう。とろりとした濃い紫色は、お皿の上で魔法のように働いてくれます。バルサミコの恩恵に預かっているのは私たちだけでなく、気取ったフランス料理店でも同じこと。そもそも、イタリアの調味料なのに、フランス料理でも見かけることを考えると、味と見た目の部分での効果は絶大だと言えます。
料理は、素材がよければ凝った味付けは必要ないので、旬に注意して食材を選べばよいということですが、そうなると、余計にシンプルな食べ方をしたくなります。最近は特に、色、そして歯触りや、いわゆる食感をどうするかだけしっかり考えて、あとは適度な味付けだけで、素材を強く感じるような食べ方がいいような気がしています。それは多分、初夏に久しぶりに訪れたカリフォルニアのご飯のせいかな、とも思うのです。ヨーロッパや日本にはない、何ともからっと気持ちのいい明るさ、と言ったらいいのか、それはもしやカリフォルニアならではの個性かしら、と思います。サンフランシスコには、フランス風のお店が増えていて、ビストロやカフェやベーカリーまで、以前よりもフランス語名のお店が多くなっていました。しかし面白いのは、フランス風を名乗っても、中身はどこか違うのです。現地の新聞のフードコラムなどで、「California Twist」という表現をみかけますが、まさにそういう感じ。ひと味加えているということでもなく、かえって単純に思えるような大らかさが、カリフォルニア風なんだろうなと思うのです。それが自然に出て来たものなら、なんて羨ましいことか。あの健康的な明朗さが、料理に表現できたら、と考えますが、いくら食べたものを思い出してなぞったところで、それは無駄な努力というもの。これからは時々出かけて行って、せめて少しでもそのスピリッツを感じ取りたいと考えています。
さて、再びバルサミコのお話です。今回の料理は、「バルサモ・ディヴィーノ」と「バルサモ・ビアンコ」の2種類を手軽に使いました。特に「バルサモ・ビアンコ」(ホワイト・バルサミコ)は、姿が見えないだけに見た目の主張がなく、味にはしっかり個性を与える、という点で、本当に優れている気がします。まずは、仕上げに少しふりかける、という使い方を試してみてください。
長尾智子(料理研究家)